
K校の選手の全身反応時間および反復横跳の成績は、日本人の体力標準値7)と比較すると有意によい値であった。このことから、競技水準が平均的なK校ではバレーボールの練習を通して敏捷性を高めることができ、競技水準の高いB校では練習を通して体力の水準を全体的に高めることができたと考えられる。
両校ではっきりと異なっているのは、小学生から高校生までの週当りの運動時間である(表1)。小学生における運動状況をみると、B校選手の方がK校選手よりも多くの時間スポーツ活動を行なっていたので、B校とK校の選手の間では小学生の時点で活動量に大きな差があったといえる。活動量が多い子どもは体力測定値も高い傾向にある4)ので、B校とK校の生徒の体力水準は小学生の頃からすでに差があったことが十分に考えられる。
高校における活動状況をみると、B校では週6日であるのに対しK校では週4日であった。また1回の練習で消費した正味のエネルギー量は、B校が約300kcal,K校が約240kcalであることから、高校生の現時点での週当りの運動量にも大きな差があることがわかる。ただし、本研究ではエネルギー消費量を歩数計により測定したが、正味量とはいえ予測していた値よりも低かった。歩数計による測定というところに原因があったのかもしれず、エネルギー消費量の値そのものは今後別の方法で測定して検討することが課題として残された。
練習時間が長い程外傷・障害の可能性が高くなると考えられるが、B校で実際に1年以内に起こった怪我をみてみると、足関節が2名、手関節・指が3名、肘関節が1名であった。受傷者は全体の半分であり、K校(足首2名)と比較すると多かった。バレーボールの3大外傷というと、腰痛、ジャンパー膝、足関節捻挫であり6)、トップレベルでは特に使い過ぎによるものが大半であると報告されている2)。本研究の被検者の中には足関節捻挫はいたが、使い過ぎによる障害はみられなかった。
また運動量が多くなると体脂肪率が少なくなることが予想される。実際池川たち3)は、実業団選手たちの形態的特徴について報告しており、身長および体重は一般女子よりも大きく、体脂肪率は小さいことを示した。B校とK校を比較すると、形態測定値に有意差のみられる項目はなかったので、本研究で比較した両校程度の活動量の差では、バレーボールを継続することによって形態に顕著な差が生じるとは考えられない。
B校とK校の体力水準の差の原因について考えると、まず練習の総量がB校の方が多いということがあげられる。練習時間が長いということは、スパイクやブロックなどのジャンプを行なう回数が多く、また呼吸循環系に対する刺激時間も長いことを意味しているので、このことがB校とK校の体力測定値の差となって現れたと考えられる。
もう1つ考えられるのは、競技水準の高い選手達は先天的に体力水準も高いということである。特に垂直跳はトレーニングにより2.5〜5.6cm程度の向上しかみられない1,8,9,12)ので、その傾向が強いのではないかと思われる。しかし、このことを明らかにするためには、将来のエリート選手を幼少時から縦断的に追跡する必要があり、現実的には大変難しい。
以上のことより、本研究で対象とした2校では、競技水準が高い方が体力的にも高い水準にあることが認められた。この体力差の原因としては、B校の方が小学生から高校生までの週当りの運動量が多いということが考えられた。種目としてはバレーボールのみではあっても、1日3時間程度の練習により、使い過ぎによる障害を起こさずに体力を全体的に向上させることができることが示唆された。 要約
競技力が異なる高等学校女子バレーボール部において活動量および体力水準を比較し、バレーボールの練習が体力に及ぼす影響について検討した。被検者はB高校(12名)とK高校(12名)のバレーボール部に所属する女子で、B校は東京都で8位以内、K校は128位内外の成績であった。
1. 1回の練習時間はB校が約3時間、K校が
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